西 英保
考えごと
生理学者、進化生物学者、生物地理学者のジ
ャレド・ダイアモンド先生の著書を読んだ。

ダイアモンド先生は、先進国と発展国の経済
的格差の要因を人種の優劣ではなく地理環境
によるものだとし、その根拠を圧倒的な博識
で説明してくれた。
さらに、飽くなき探究心は止まらずに、衰退
社会の分析、伝統的社会と現代社会の対比と
続いていき、先生の40年間の歴史社会の冒険
が詰まった6冊だった。その、壮大な冒険の
きっかけが、たまたま出会ったニューギニア
人の「あなたがた白人は、たくさんのものを
発達させてニューギニアに持ち込んだが、私
たちニューギニア人には自分たちのものとい
えるものがほとんどない。それはなぜだろう
か?」という質問からだったのが驚きである。
歴史を学び法則性をみつけ、将来の予測に生
かしていきたいが、その難しさを先生が述べ
ているのが刺さった。
「予測を立てようとする試みを複雑なものに
しているのは、歴史というものが持っている
特性である。これらの特性はいくつかの方法
によって説明できる。人間社会や恐竜生態系
は非常に複雑であり、そこにはさまざまな要
因がかかわっている。しかも、それらの要因
は相互にフィードバックし合っている。低レ
ベルにおけるわずかな差異が、高レベルにお
ける創発的な変化につながってしまうことも
ある。この典型的な例が、前述した1930年
にヒトラーが遭遇した交通事故におけるトレ
ーラー運転手のブレーキ操作である。彼がブ
レーキを踏み込む瞬時の反応の差異は、第二
次世界大戦で死傷したおびただしい数の人々
の人生にまで影響をおよぼしている。」
(銃・病原菌・鉄 下p398~399)
つまるところ、環境を知り、受け入れ、環境
を変える要因に敏感になっていかなければい
けないと思った。本書を読んで、ピンと浮か
んだのが、AI(人工知能)のことと諸行無常
(世の中は常に変わっていくという意味)と
いう言葉だった。
個人の力ではどうしようもできない大きな物
事や流れを受け入れ、適応していかなければ
ならない。