時間は有限

昨年、三大陸最高峰の山にチャレンジして学
んだことの一つが「時間は有限」であるとい

うこと。当初は体力を向上させる目的で、ト
レイルランニングとウルトラマラソン、トラ
イアスロンの3つの競技を、登山と並行させ
る予定でいた。山も、競技も、最高峰レベル
を目指して真剣にやってみようと思っていた
のだ。実際に半年間やってみて気が付いたの
が、「最高峰を目指すのならどれも片手間で
はできない」ということ。それは体力的にも
資金的にも、そして時間的にも、である。だ
から、「選択と集中」が必要なのだ。今集中
すべきなのは登山である。

そして、私は、ほぼ全ての時間を登山に繋が
るように使った。というよりも、登山に関係
のない時間が徐々になくなっていった。それ
は、生産性を上げるために無駄をなくすとい
うことではない。一見無駄に思えるかもしれ
ないが、家族や友人と過ごす穏やかな時間や
面白い時間、楽しい時間は、「登山のための
時間」として大切なのだ。こういった時間が
あるからこそ、より生産性の高い時間がつく
れると私は思っている。

工業デザイナーの奥山清行さんが先月パリで
開催した有田焼のイベントに北野武さん、隈
研吾さん、佐藤可士和さんという超豪華メン
バーが参加されていた。今をときめく超多忙
な方々だが、その中でも時間をつくり、楽し
みながら作品を創られたらしい。まさに、こ
のような時間が大切なのだと私は思う。中田
英寿さんの「大人とは真剣に無駄ができるこ
こ」という言葉の意味が響く。時間は有限だ
からこそ、何が大事かを見極め、有意義に使
いたいと思う。

私が今、登山に夢中になっているのも、「時
間は有限」だからである。人間は歳をとるご
とに体が老いていく生き物だ。20歳前後を
ピークに身体能力の低下が始まり、それをト
レーニングとメンタルで補っても心身ともに
最高の状態は30歳前後。現に30歳前後で
キャリアハイとなるスポーツは多い。つま
り、
私が全力でスポーツができる最後の時間
が今
なのである。10年後20年後にスポー
ツを
したいと思っても最高の状態にはなり得
ない。

私にはスポーツで特別な実績はない。しか
し、
幼少期からスポーツを楽しみ、スポーツ
を通
じて人格形成もされてきた。スポーツに
育て
てもらったと言っても過言ではない。だ
から、
心身共に最高な状態でスポーツができ
なくな
るのはとても寂しい。「いつか最高の
状態で
はなくなる」。その危機感を感じなが
ら、「
スポーツをやるだけやった」と言える
ように
登山を楽しみたいと思う。「時間の流
れ」に
負けないように。