エルブルース(ヨーロッパ最高峰)

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キリマンジャロ登頂から約8ヶ月、
ようやくヨーロッパ大陸最高峰の
エルブルースに挑戦することができた。
中8ヶ月はあっという間のようで長かった。

(エルブルース)

エルブルースはロシアのコーカス山脈にある、
ヨーロッパ大陸最高峰の山である。
標高は5624mで、西峰(5,642m)と東峰(5,621m)の
2つのピークから成り立っているのが特徴的。
また、天候の変化が激しい山であり
ホワイトアウト(吹雪で視界が悪くなる現象)
で登山者を苦しる山である。

(エルブルースまでの準備)

まず、エルブルース登山で失敗する要因を分析すると、
大きく以下の3点に集約される。
①天候(雪崩、強風なども含む)
②高山病
③体調(ケガ、体力不足)
失敗の可能性には様々な要素があるが、
上記の要因がウェートのほぼ全てを占めると考えられる。
つまり、この3大要因をいかに防ぐかが成功への道となる。
さらに、僕は今回が初めての雪山挑戦であったが、
今後の伸びしろを見極めるため雪山トレーニングなしで挑んでみた。
非常識で危ないと思われるが、
玉砕覚悟で雪山初挑戦をエルブルースで試してみたかった。

(①天候対策)

今回の失敗要因で一番可能性が高かったのが、
天候による失敗であった。
しかし、天候は人的力を超えているので、
運頼みになってしまうしかない。
エルブルースは3時間おきに天候が変わるといわれ、
特にホワイトアウトという強風が登山者を苦しめる。
すなわち、天候が急変した時に即登頂を諦めて
撤退できる「心」の準備をしておく必要があった。

とは、言っても登頂を自分の意思で諦めるのは難しい。
完全に動けなくなったり、意識がなくなったり
したら諦めはつくが、
自らの意思で諦めるのは、想像しただけで難しい。
ただでさえ高所で意識がもうろうとしている状況の中で
冷静に判断していかなければならない。
だから、どのような状況でも冷静になれるように
僕は「禅」を始めた。

(禅)

もともと日本文化をもっと勉強していきたいと
思っていたので今回が禅を学ぶいい機会であった。
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僕が通ったのは、日暮里にある山岡鉄舟縁の寺「全生庵」
で今は平井正修さんが住職をされている。
最近は安部総理大臣が通っていることもあってか、
初参加時は2ヶ月前から予約しないと入れない。
僕みたいな普段はどんくさくてでぼーとしているような
人間にはお寺での座禅体験はすごく良い経験であった。
禅は座禅をしたからといって特別に
何か得たり集中力が上がるようになるわけではない。
単に意識を呼吸に集中するだけ。
すなわち、その時にやるべきことだけをやるだけである。
緊張した時はそのまま緊張すればいいし、
仕事をする時は仕事をする。
その場その場で必要なことだけをすればいい。
なので、登山をする時はガイドの指示に従って
登る時は登り、
下るときは下るだけである。
禅によって冷静に判断できる心の準備はできた。

(②高山病対策)

次にキリマンジャロ時に強烈に苦しめられた高山病対策である。
高山病対策は体を高度順応させるしかない。(体調や先天的な要素もあるが)
とはいっても日本で一番高い場所は富士山の3778mである。

そこで、80歳でエベレストに登頂したことで有名な三浦雄一郎さんが
提供しているミウラドルフィンズに低酸素トレーニングをさせて頂いた。
ちなみに、イッテQで有名なイモトさんもこの施設を利用している。

まず、簡単な高所テストをして現状把握を行い、
低酸素室に入ってトレーニングを行う。
また、高山病は呼吸法が大事なので、
心拍数を把握しながら呼吸法のレクチャーもして頂ける。
低酸素室は6000mまでの酸素環境を作れ、
4500m~6000mまで徐々に体を慣らしていく。

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隣に写っている方はキリマンジャロに登りにいかれた鈴木さん。
二人ともトレーニング前なので笑顔で写真に写っているが。
この後、6000mまで標高を上げたのちに笑顔と表情は消えた、、、
この、低酸素トレーニングはなるべく直前期に集中してやったほうが
効果がある。

一度、寝不足のままトレーニングをしたら
案の定高山病の症状が強く出た。
改めて日々の体調管理が重要だと実感させられた。

そして、低酸素トレーニング最終日に奇跡が起こった。
低酸素室で意識もうろうとトレーニングしていたところ、
見たことある白髪の男性が、部屋の外にいる。
改めて見てみるとそこには三浦さんがいた!
たまたま取材があったらしく施設に来ていたのだ。

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なんと幸運なことが!
三浦さんはとても優しい方だった。

低酸素トレーニングは翌日まで症状が残るので大変だったが、
しっかりと高度順応の準備をすることができた。

 (③体力対策)

体力対策は①基礎体力の向上、②食生活の改善、③体の柔軟性の向上、
上記の三点に力を入れた。

①基礎体力の向上として→1周間連続でフルマラソンができる体力を作った。
さらに、24時間マラソンもしたかったのだが、
24時間走れる日がなかったので秋の楽しみとする。

②食生活の改善として→ジョコビッチ(プロテニスプレイヤー)
が実践しているグルテンフリーダイエットを取り入れた。
今まで気付かなかったのだが僕はグルテンと相性が悪いらしく、
パン、麺類、お菓子を食べるのを一切やめたら、
体のキレが増し、さらに体重が3キロ程絞れた。
春先まで毎日運動していても体重は落ちなかったのに
グルテンカットするだけ体重が落ちたのだから、
不思議である。

③体の柔軟性の向上として→毎日20種類のストレッチを
12秒×3セットしている。
このストレッチを半身浴の後にすると疲労回復にもつながる。

以上の体力作りを日々の習慣にした。

(エルブルースへ:日本→ミネラルボディ)

以上の準備をしたうえでいざエルブルースへとむかった。
エルブルースはモスクワから飛行機で
2時間ほど離れたミネラルボディ空港
から車で3時間程の場所にある。
僕のフライトは日本→ドバイ→モスクワ→ミネラルボディと経由して到着する。
前回のキリマンジャロ時にタンザニアの空港でボイコットされて
日本に帰るのが一日遅くなってしまうという事件があったので、
今回はフライトで事件が起きないようにと願っていた。
しかし順調に日本→ドバイ→モスクワと経由して、
最後のミネラルボディへと出発する搭乗口で待っていた時に
「このフライトは今日は飛ばない」というアナウンスが流れた。(苦笑)
今回も事件がきたぁーーーと思うと同時に、
エルブルースに試されているようだった。
その場で、新しいフライトとモスクワでのホテルを手配したのだが、
翌日の早朝にホテルから空港まで地下鉄の乗り継ぎと高速鉄道を使って
移動しなけばならなくなり、余計な神経を使わされてしまった。(苦笑)

(1日目:モスクワ空港からチゲェト村のホテルへ)

ミネラルボディ空港で現地のガイドで
今回の司令塔のユウリさんと合流して、
空港から車で3時間程かけてベースキャップ近くにある
チゲェト村のホテルへ移動。
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チゲェト村は標高2100mのとろこにあり、
山岳リゾート地でホテルが密集している。
ちなみに今回は、「Pilgrim Tours」という現地ツアーに参加した。
現地ツアーなので、総勢7ヶ国で12人の多国籍パーティとなった。
この日は、ホテルに到着してから夕食を食べて寝るだけ。
日本からのフライトや朝からの地下鉄移動などもあり、
ホテルに着くとすぐに眠りについた。
寝過ぎて夕食に遅刻してしまう程寝ました、、(苦笑)

(2日目:ホテルからチゲェト山へ)

二日目はホテルで朝食を食べてチゲェト村から
チゲェト・カラバシ山へと高度順応を兼ねたハイキング。
カラバシ山はエルブルースの向いにある
標高3400m程の山である。
チゲェトの町からスキーリフト2本乗り継ぎ、
スキー場上部から2時間ほどのハイキングで山頂へ。
カラバシ山からうっすらと見えたのはエルブルース。
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そしてまた1時間程で下り、ホテルへと戻る。
ちなみにカラバシ山から見えるこの山は
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ドングゾラン山(4437m)という山で、
岩肌が「7」の字に見えることで有名な山。
エルブルースはセブンサミッツの一つなので、
なんとも不思議な山である。
この日はこの軽いハイキングをして終わり。
後はホテルに戻ってリラックス。
ほぼ眠っていたが、、

  (3日目:ホテルからベースキャンプへ)

三日目はホテルからいよいよベースキャンプへと出発する。
ホテルから車で10分、エルブルースの登山口テレスコルから
ゴンドラ2本を使ってベースキャンプとなるバロー小屋へ。
今回のベースキャンプとなるこのバロー小屋は
標高3700mの場所にある。
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この移動の時に面白かったのが、食料、水、道具の
バケツリレーである。
登山口からは食料などの荷物を各自運ばないといけないのだが、
総勢10人を超えるパーティなので
その量も相当なものである。
なのでゴンドラからゴンドラへと移動する時、
ゴンドラからバロー小屋に移動する際は
みんなでバケツリレーで物を運んだ。
そのバケツリレーがとてつもなく早い!
誰の支持もなく、各自配置について
モノを移動をさせるので、見ただけでゾッとするような
荷物もあっという間に移動できた。
僕はこのバケツリレーを見て
このチームはみんな登れると思った。(天候や高山病などを除いて)
というぐらいの完璧なチームワークだった。

ベースキャンプへの荷物の移動を終えると
ランチを食べてから高度順応のため
エルブルースの4700m地点にある
パスツーコフまで4時間程かけて
ハイキング。

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僕はこの時が初めてのアイゼンを
つけての雪山歩行だったので、
一歩一歩の感触を確かめながら登った。
なので、神経的にも肉体的にも疲れ、
ベースキャンプに戻るとすぐに寝た。

(4日目:リラックスDay)

4日目は夜0時からアタックが開始されるので
昼に雪山墜落時の対策をしてからは、
終始リラックスする日に。
つらく
僕はアタックまでは極力無駄なことをしたくないので
一日中寝ていた。
僕はアタックまでの時間は極力寝るようにしている。
仲間と話すのも、景色や星空を楽しみのも
アタックが終わるまでは我慢する。
とにかく力を貯めるために寝る。

 (5日目:アタック日)

そしていよいよアタック日。
23時に起きて軽くご飯を食べて準備をして
0時からアタックを開始する。
この時に完全に登山スイッチを入れる。
高山病の症状は全くなし。
二日前に登った道を真っ暗闇の中登る。
真っ暗で何も見えないのと集中して
登っていることもあってか
あっという間に3時間程で
パストホフロックに到着した。
ここからさらに一直線の坂を2時間程登る。

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坂を登り切ると、20cm足を滑らせると
下に墜落するような緩い坂を2時間程登った。

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この時点でも高山病の症状は出ていなかったのだが、
アイゼンで雪山を6時間登り続けたのに加え、
墜落しないように神経を使って歩いたので、
疲労感が強くなってきてしまった。
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休憩時間になると即座に座り込むようになる。
キリマンジャロは最終アタックで
約1000mを6時間登るのに比べ、
エルブルースは1800mを10時間以上かけて登る。
キリマンジャロに比べて2倍近い時間の
雪山を登ることになるのである。
5200m時点ぐらいで墜落に気をつけながら
登り続けた緩い坂が終わり一息つこうとした時に
見えたのは過去最大に急な斜面の山が見えた。
エルブルースは山を登るとまた新しい山が出てくる。
腰から地面に座り込んで休みながら、
目の前に見える巨大な坂を眺める。
そこにガイドのユウリが
「この坂を登ったらサミット!」
「ラスト3時間だ!」
「後はもう簡単」
と励ましの声をかけてくれる。
神経も体力も底をつきはじめた。
高山病対策の呼吸を強くしすぎて
過呼吸気味になってしまうこともあった。
もうここからは気力勝負。
今までで一番急で墜落しそうな坂を
一本のロープを頼りに呼吸だけ意識して気力で登る。
ラスト3時間は本当に気力だけで登った。
そして、
「もうあと10分でサミットだ!」
「天気は快晴!我々はラッキーだ!」
と声をかけてくれる。
ユウリの言うとおりに天候に恵まれて運が良かった。
そして、最後の力を振り絞って登ること10分。
ついに頂上が見えた。
今回も嬉しさよりも先にもう登らなくて済むという
気持ちで頂上に登った。
登れて「ホッと」したのが正直な気持ちだった。

全員頂上あ

 

 

 

 

 

登頂の余韻に浸った後は下りがまっている。
当然力は残ってなくて通常の1.5倍近い時間をかけて下った。
エルブルース登山は登りも大変だったが、
最後の下りが一番大変だった。
こんなに山を登ったのか?
と疑いたくなるような下り坂がまっていた。
ベースキャンプまでの時間は長かった。

(6日目:ベースキャンプからホテルへ)

翌日、ベースキャンプからホテルへと戻って祝賀会をした。
今回はなんと全員無事に登頂に成功することができた。
そのぐらい天候に恵まれたのだろう。
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なので最後に登頂祝いに全員でウォッカで
打ち上げパーティーをして幕を閉じた。
エルブルースに登るような人達が12人集まって
ショットグラスとウォッカを片手にする
パーティーがその後どうなったかは
ご想像にお任せします。(笑)

(感想)

今回もギリギリの登頂でした。
原因は雪山への慣れと体調が
ベストになってなかったこと。
雪山を舐めていたわけではないのですが、
想像を遥かに超える大変さでした。
基礎体力の訓練と高山病対策を
しっかりしてなかったら、
乗り換えられなかったのかもしれないです。
体調管理も登山直前期のスケジュールを
もっとシンプルにしていかないといけないと思いました。
まだ勢いと運で登れてるだけなので、
改善していきたいと思います。

本当に天候に恵まれてラッキーでした。
今回はそれに尽きます。

次は南米のアコンカグア!

それでは、今後ともよろしくお願いします!